シングルマザーでも住宅ローンは組める?
近年では未婚の母、あるいは離婚・別居などにより女性が単独で仕事や子育てもこなすシングルマザーが増えつつあります。ひとりで働きながら子育てをするシングルマザーの人にとって、住宅を購入することはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、住宅ローン審査のポイントについて理解することで、ひとり親世帯でも住宅ローンを借りてマイホームを購入できます。今回は、シングルマザーが住宅ローンは組めるのか、審査に通りやすくするためのポイント、利用できる制度などについて紹介します。
目次
1:シングルマザーでも住宅ローンは組める?
厚生労働省による「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、いわゆる母子世帯の母は、その 86.3% が就業しており、このうち「正規の職員・従業員」が 48.8 %と最も多く、次いで「パート・アルバイト等」が38.8 %となっています。前回(平成28年度)調査と比べて「パート・アルバイト等」の割合が4.6% 減少し、「正規の職員・従業員」が 4.5 %増加しました。
母親1人で子育てと仕事を両立させる場合は、このように正規の職員やパート・アルバイトなど、各家庭によって雇用形態はさまざまですが、非正規雇用として働きながら子育てを行っている場合でも、住宅ローンを利用できるケースがあります。
通常、住宅ローン審査で重要視されるポイントとしては、「完済時の年齢」「借入時の年齢」「健康状態」「担保評価」「勤続年数」「年収」などがあります。住宅ローンの種類によっては、契約社員や派遣社員は対象外となるケースもありますが、シングルマザーや独身女性だからといって、必ずしも住宅ローンの審査が通らないわけではありません。
近年は仕事を持っている女性の割合が増加傾向にあることから、女性向けの住宅ローンサービスを提供する金融機関も出てきています。乳がんや子宮がんなど、女性特有の病気への保険がついていたり、金利が優遇されていたりと、女性でも住宅ローンを組みやすい仕組みとなっています。
住宅ローン審査で最も重要なポイントはあくまで「返済能力」です。女性であることや家庭状況が審査に大きく影響することはないでしょう。
厚生労働省が発表している「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の住宅所有状況は賃貸住宅や公営住宅などで暮らしている割合が過半数を占めているものの、本人名義の持ち家に暮らしている世帯も約15%存在します。
2:住宅ローン審査を通るためには、年収はいくら必要か?
母子家庭の人であっても、それ以外の人にとっても同じ条件ですが、住宅ローン審査に通るためには、最低でも200万〜300万円程度の年収がなければ審査を通過するのは厳しいでしょう。大手銀行の住宅ローンでは年収400万円以上と定めている場合もあります。
月収に換算すると25万円前後からが審査通過のボーダーラインとなり、これを上回る場合には融資を受けられる確率が上がります。年収以外にも雇用形態や勤続年数から総合的に判断して審査をするため、まずは基準となる年収に加えて、住宅ローンの初期費用の目安となる150万〜300万円ほどの貯金があると安心でしょう。
2.1:年収と返済負担率の目安について
住宅ローンの借入額を多くすれば、物件の購入予算を増やせます。しかし、たとえ同じ年収の世帯でも、どれくらいの金額を住宅ローンの返済に充てられるかについては、それぞれの事情によって異なります。
年収から借入限度額を算出する場合は、以前、こちらのコラムでも取り上げたことがある返済負担率が1つの目安となります。
住宅ローンにおける借入額の目安は、年収の20%〜30%までに設定することがおすすめです。
近年の景気変動や転職などの事情から年収が下がる可能性もあるため、余裕をもって返済をしたい場合は、返済負担率は年収の30%以内に収めるのが妥当でしょう。
3:審査を通りやすくするためのポイントは?
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なります。上記でも述べたように、住宅ローン審査で重要視されるポイントとしては、「完済時の年齢」「借入時の年齢」「健康状態」「担保評価」「勤続年数」「年収」などがあります。
「勤続年数」が重要視されるのは、同じ職場に3年以上勤めていることで、離職の可能性が低いだろうと評価されるからです。転職が当たり前の時代背景から、なかには勤続年数の基準を1年以上としている金融機関もあるので、必ずしも3年が基準とはいえません。
また、ここ数年の住宅ローン審査では、申し込んだ人が正社員なのか契約社員なのかといった、「雇用形態」が重視される傾向にあります。正社員として働いている方や公務員は毎月の収入が安定しており、失業の心配が少ないため、審査に通りやすくなります。パートやアルバイト、契約社員、派遣社員などは継続的な安定収入という面で不安があります。そのため、審査に通るかどうかは厳しいといえるでしょう。ただし、一定額以上の収入があればフラット35の申し込みはできるので、家を買うのがまったく無理ということはありません。
以前、こちらのコラムでも住宅ローンの審査のチェックポイントについて取り上げていますので、是非参考にしてみてください。
3.1:返済額の調整や自己負担金
頭金という言葉も一般的ですが、借入金額の一部をまとめて先払いする「自己負担金」をなるべく用意するようにしましょう。仮に500万円の自己負担金を用意すれば、2,500万円の物件を購入する際に組むローンの総額は2,000万円で済みます。
これにより月々の返済額が減り、自己負担金がない場合と比べると生活に余裕ができます。また、ローン審査の面を考えるとまとまったお金を用意できる収入があることや、計画性のある人物であることもアピールできるため、自己負担金を用意できた方が審査が通りやすくなる可能性が高いと言えます。
しかし、生活に不安がでるようなら無理せず手元にお金をとっておき、自己負担金を用意する必要はありません。借入額が大きい場合、住宅ローン控除を受けられる金額が大きくなるメリットもあります。自己負担金は手元に残るお金とのバランスが大切です。
4:児童扶養手当(母子手当)は、住宅ローン利用に影響する?
母子家庭の中には、児童扶養手当(母子手当)を受けている人もいるでしょう。児童扶養手当とは、ひとり親のもとで生活している児童が安定した生活を送れるよう、自立の促進と児童福祉の増進を図ることを目的に手当を支給する制度です。児童扶養手当には受給条件や所得制限が定められています。では、住宅ローンを利用した場合、児童福祉手当に対して影響はあるのでしょうか。
4.1:不動産を所有することで手当が減額されることはない
母子家庭の方が受給できる児童扶養手当に関しては、物件を購入したからといって手当が減額されたり、打ち切られたりすることはありません。原則として今のままの条件を維持することができるので、児童扶養手当を気にかけることなく、マイホームの購入を検討できます。児童扶養手当は、一人で子どもを育てている人に向けて行われている福祉なので、家を持ったからといって何らかの影響が出ることはありません。
しかし、一人で子育てをするという前提条件が外れてしまった場合には、打ち切りなどの措置がとられる場合があるため注意は必要です。
たとえば購入した物件で別の人と同居したり、両親や兄弟姉妹、親族と同居したりする場合には、受給の条件から外れることになります。不動産を購入したからといって、その瞬間から児童扶養手当の対象外になることはありませんが、家の使い方次第では見直しを受ける確率が高いことも理解しておきましょう。
5:シングルマザーが受けられる公的制度
シングルマザーが住宅を購入するにあたり、新しく「固定資産税」や「修繕費」などの支払いが発生します。これらは毎月の住宅ローンの返済とは別に必要になる費用のため、あらかじめ準備しておくことが大切ですが、収入や支出の状況によっては家計への負担が重くなることも考えられます。このような急な出費に備えるためにも、国が用意している以下の税制などを利用しましょう。 住宅ローン借り入れの有無にかかわらず、ひとり親世帯が受けられる制度のため、家計の負担軽減のために活用できます。
5.1:ひとり親控除
所得税の所得控除の1つとして用意されているもので、ひとり親に該当すると35万円の所得控除が受けられます。ひとり親とは、原則としてその年の12月31日時点で結婚をしていない、または配偶者の生死が分からない一定の人で、次の3つの要件に全て当てはまる人のことをいいます。
1.事実上婚姻期間と同じ事情だと認められる一定の人がいない
2.生計を一にする子どもがいる
3.合計所得金額が500万円以下
5.2:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
20歳未満の児童を扶養している配偶者のない女子または男子、寡婦等に貸し付けられます。住宅の建設や購入、補修、保全、改築、増築をするのに必要な資金を無利子で150万円まで借りることができる国の制度です。
1.対象者は母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦
2.限度額は150万円
3.据置期間は6か月※
4.返還期間は6年
5.利率は保証人有:無利子、保証人無:年1.0%
※据置期間とは、元金の返済が発生せず、利息のみを支払う期間のことです。
6:まとめ
シングルマザーであるからローンを組めないのではないかと不安に感じている人もいるでしょう。しかし、シングルマザーであること自体は住宅ローンの審査に大きな影響はなく、他の人と平等な形で審査を受けることになります。住宅ローン審査で最も重要なポイントはあくまで「返済能力」です。女性であることや家庭状況が審査に大きく影響することはないでしょう。また、シングルマザーが住宅購入する際に利用できる公的な制度もあるので、こうしたものを利用しながら、家を買うことを検討してみてください。