住宅購入の贈与税の特例とは?~非課税枠の要件~
前回の贈与税のコラムでは基礎知識についてお伝えしました。
「住宅購入のための資金援助にも贈与税がかかるのか…」と思われた方もいらっしゃるかと思います。
しかし、住宅購入のための贈与には特例があり、贈与税が非課税になることも。
今回は、贈与税に関するコラムの第2弾として令和5年度税制改正大綱により、2023年以降も特例が延長となった「住宅取得等資金の贈与税の特例」についてお伝えしていきたいと思います。
目次
1:住宅取得等資金の贈与税の特例
住宅購入のために親からの資金援助を受けた人向けの優遇措置で、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」というものがあります。
ここでは親からの資金援助を受けたときに利用できる特例や、注意点について詳しくお伝えしていきます。
1.1:住宅取得等資金の贈与税の特例ってどんな制度?
住宅資金等の贈与税の特例とは、父母・祖父母などの「直系尊属」から住宅取得のための贈与を受けたときに、一定の条件を満たすことで贈与税の優遇が受けられる制度です。
「贈与税の基礎知識」のコラムでお伝えした通り、通常なら、贈与が1年に110万円を超えると贈与税がかかりますが、この特例制度の適用対象となると大きな節税となります。
この特例は、『2026年12月31日』までに贈与を受けた場合に対象となります。
1.2:非課税枠はいくらまで?
非課税枠は省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円までです(2026年12月31日まで延長)。
新築住宅で「省エネ等住宅」に該当するのは、以下の3つの要件のうち、いずれかを満たす住宅です。
令和6年度の税制改正では、「省エネ姿勢の高い住宅」の住宅の要件が、新築住宅についてはこれまでの「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること」から原則、「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること」と条件が厳しくなったので注意が必要です。
■省エネ性が高い住宅
断熱等性能等級が5以上、かつ一次エネルギー消費量等級が6以上
■耐震性が高い住宅
耐震等級2以上または免震建築物
■バリアフリー性が高い住宅
高齢者等配慮対策等級3以上
また、贈与税の基礎知識でもお伝えした通り、基本的に以下の2つの非課税枠があり、いずれかを選ぶことができます。
- 毎年110万円まで非課税になる(暦年贈与の基礎控除)
- 合計2,500万円までが非課税になる(相続時精算課税の特別控除)
※相続時精算課税を選ぶと相続時に合算して相続税が課せられる場合がある
上記の非課税枠は、住宅資金の非課税枠と加算して併用することができます。
なお、非課税となる上限金額は、贈与を受けて住宅を取得した時期によって異なり、2019年4月1日~2020年3月31日までの住宅資金等の贈与税の特例では最大3,000万円だったのに対し、2022年4月1日~2026年3月31日までの非課税枠は最大1,000万円と、年々非課税枠は少なくなっている傾向があります。
1.3:特例を受ける条件
贈与税の非課税の特例を受けるには条件もあるため、以下で人に関する条件と住宅に関する条件をそれぞれまとめます。
これらの条件を満たしていないと特例は受けられないため、必ず確認しておきましょう。
1.3.1:人に関する条件
以下、特例を受ける際の人に関する条件です。
- 「直系尊属」からの贈与を受けた人
- 贈与を受けた年の1月1日現在、18歳以上の人
- 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の人
※ただし、取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額の制限が「1000万円以下」とされます。
- 2009年~2021年分の贈与税申告で「住宅取得等資金の非課税」を受けていない人
- 自身にとって配偶者や親族など特別の関係がある人から取得した住宅でないこと
- 贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された資金の全額を充てて住宅の購入や新築をする人
- 贈与を受けた年に日本国内に住所がある人
- 贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその住宅に入居する人、または遅滞なく入居できる人
1.3.2:住宅に関する条件
以下、特例を受ける際の住宅に関する条件です。
■新築の場合
- 登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下の新築
- 床面積の半分以上を住居として使用する新築
2:住宅取得等資金の贈与税の特例についての注意点
マイホームの購入する際、贈与を受けるときに失敗しやすい注意点を見ていきましょう。
些細なことでも注意しないと、予想外に大きな税金を負担することになってしまうかもしれませんので、ポイントをお伝えしていきます。
2.1:贈与税申告のタイミング
贈与税の特例を利用するためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの期間に申告します。この期間内に申告しないと、特例が適用できなくなってしまうので気を付けましょう。
2.2:贈与税が0円でも必ず申告が必要
「援助してもらった金額が、非課税の範囲内だから申告しなくても大丈夫だよね!」と考えている人は注意が必要です。
住宅取得等資金の贈与税の特例で500万円(省エネ住宅は1,000万円)までが非課税になりますが、自動的に非課税になるという意味ではありません。
上記でもお伝えした通り、贈与税の申告をしないと特例が適用されません。
万が一、申告し忘れてしまうと、非課税の適用を受けられなくなってしまうので注意が必要です。
2.3:住宅ローン控除と併用する場合
マイホームを購入する際、多くの人は住宅ローンを組みますよね。以前こちらのコラムでもお伝えしましたが、住宅ローン控除とは住宅ローン年末残高、もしくは住宅取得価格のうち少ない方の0.7%が所得税から控除される特例のことで、条件次第で13年間控除が受けられる特例措置となります。
しかし、贈与税の特例と所得税の特例を併用する際は、適用額に注意が必要です。
もし、3,500万円の物件価格に対して借入額2,500万円で贈与額1,000万円だった場合、住宅取得資金は借入額2,500万円+贈与額1,000万円を合わせて3,500万円となります。住宅ローンの借入額と贈与額の合計金額において、借入額に対して住宅ローン控除の対象にはなりますが、贈与額には住宅ローン控除は適用されません。
住宅ローン控除と併用する場合は適用額に気をつけなくてはなりません。
2.4:入居のタイミングに注意
上記でお伝えした通り、住宅取得資金等の贈与税の特例を受ける条件として、入居のタイミングに期限があることに注意が必要です。2026年12月末までに贈与が受けられたとしても、2027年3月15日までに入居できない場合は適用外になってしまいます。
もし、注文住宅や未完成物件の購入を検討されていて、住宅取得等の贈与税の特例を利用する予定の方は2027年3月15日までに物件が完成し入居が可能なのかということを確認しましょう。
3:まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は令和5年税制改正によって2026年まで延長になった「住宅取得等資金の贈与税の特例」についてお伝えしました。
親子間であっても贈与税はかかる場合がありますが、マイホーム購入のための贈与は、親や祖父母からの贈与であれば最大1,000万円まで非課税になる特例制度があります。
細かい要件や税務署への申告義務もある為、住宅取得資金等の贈与税の特例を利用する際には必ず専門家に相談することをおすすめします。
万が一、適用外となってしまうと多額の贈与税を負担することになりますので、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談しながら進めましょう。